| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-296 (Poster presentation)

タンザニア・マハレ山塊国立公園における森林棲アフリカヒョウの生息数と他地域との比較

*仲澤伸子(京都大・野生研),大谷ミア(京都大・野生研)

ヒョウは単独性であり、生息地によって異なる広さの行動圏を持つ(アカシアウッドランドのクルーガー国立公園:オス47.1 km2、メス15.4 km2、熱帯雨林のタイ国立公園:オス85.6 km2、メス25.4 km2)。オスは複数頭のメスの行動圏を囲んだ行動圏をもつが、同性同士の行動圏はあまり重複しない。ヒョウは地上性の捕食者であり、タイのような二次林では、ダイカーをもっとも捕食するとされる。しかし似た環境であるタンザニアのマハレ山塊国立公園ではダイカーは2種しか生息しておらず、その密度は低い。このような環境では、上記の調査地とは異なる行動圏をもつと考えられる。そこで、マハレ山塊国立公園内の約16km2において、2014年7月から1年間、カメラトラップ32台を16ヶ所に設置し、ヒョウの生息数を調査した。そして、ヒョウが捕食する動物の撮影頻度との関連を検討した。撮影されたヒョウの体側面の模様から、オス1頭、メス5頭、子1頭を識別することができた。また、母子以外で2頭が同時に撮影されることはなかったが、調査地の南部に設置したカメラでは最大で4頭が撮影された。また、ヒョウの糞は南部に多かった。先行研究と比較すると、マハレでは狭い範囲で多数のヒョウがその行動圏を重複させて生息していることが示唆された。森林では視界が悪く、他個体に出会うことも少ないため、種内での行動圏の重複が許容されているのではないかと考えられる。また、調査地の南部では北部に比べてダイカーが数多く撮影されており、その周辺のカメラで撮影されたヒョウの個体数が多かったことから、ダイカーが多い南部をより多くのヒョウが利用していると考えられる。


日本生態学会