| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-302 (Poster presentation)
広島県ではイノシシによる農作物被害額が鳥獣被害全体の80%を占めている。特に被害が甚大な呉市では、箱ワナを貸与して捕獲に努めているが、捕獲率は低い。箱ワナの稼働・捕獲率の向上を図るためには、各箱ワナのこまめな巡回とともに、全箱ワナの稼働状況(稼働の有無、寄せ餌の種類とその補充日等)と捕獲状況(捕獲日時、動物種、雌雄の別、成幼の別等)についての情報を経時的かつ一元的に把握し、箱ワナの管理方法と設置場所の適性を評価する必要がある。しかし、農業従事者と狩猟者が高齢化している今、一連の作業をすべて人的に行うことは、呉市だけでなく全国的にも困難な状況にある。そこで、本研究では、作業の一部を人に代わって担うことが可能な「稼働・捕獲情報取得システム」を搭載した箱ワナの開発を目的として予備実験を行った。
実験は一般的な箱ワナ1台を対象とした。システム搭載前の稼働・捕獲を把握するために、赤外線自動撮影カメラ12台を箱ワナ周辺に1ヶ月間設置した。その後、システムを搭載して1ヶ月間の稼働・捕獲状況を調査した。本システムの機能の概要は以下の通りである。1)スマホのカメラが任意の間隔(0〜30分間)で箱ワナの状況を撮影して任意のクラウドにアップロードする、2)温度センサーと光センサーの2つの感知機構で特定の大きさの動物に対して作動する、3)設定した時間帯のみ稼働する、4)ワナが作動したことを作動時の画像を添付したメールで通知する、5)捕獲時刻と体高の情報に加えて現地で手動入力した捕獲動物の情報を任意のクラウド上にアップロードする。本大会では、本システムを搭載した箱ワナの稼働・捕獲状況についての詳細な説明を行う。
今後は、本システムを複数の箱ワナに搭載し、その稼働・捕獲状況を長期的に評価することで、現場に対応したシステムの構築を目指す。