| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-307 (Poster presentation)

水産物消費に由来する窒素汚染をフットプリント指標で評価する

*種田あずさ(横浜国大・環境情報), 永野一郎(日水中研), 松田裕之(横浜国大・環境情報)

施肥や作物栽培、化石燃料の使用で排出された活性窒素は、大気・水域・土壌の窒素汚染の要因である。

窒素フットプリント(NF)は、個人の消費により直接及び間接的に排出される活性窒素量を評価する環境負荷指標である。既存の食料NFモデルは、タンパク質供給量を起点として物質フローと利用効率・再利用率を基に推計するものであり、魚介類消費によるNF(魚介類NF)を畜産物と同様に単一分類として扱ってきた。

本研究では、より実態に基づいた魚介類NF評価モデルを提案し、日本を事例として評価すること、食品選択による負荷低減に向けた情報をより正確に提供することを目的とした。

構築モデルでは、魚介類の生産・流通・消費の実態を反映し、給餌養殖、無給餌養殖、天然漁獲で区別した。飼料の成分と転換率を見直し、天然魚介類製品の生産過程についても考慮対象とした。また、世界平均パラメータセット(PW)と、日本のパラメータセット(PJ)を求めた。

日本の2009年の魚介類NFは、既存モデルによる3.71 kg-N/人/年(うち養殖分3.36 kg-N/人/年)に対し、構築モデルではPW で1.53 kg-N/人/年(うち給餌養殖分0.68 kg-N/人/年)、PJで1.55 kg-N/人/年(同0.64 kg-N/人/年)となった。

さらに、分類ごとのNFを比較するために、「食品としての摂取窒素量」に対する「生産過程での活性窒素排出量」の比を求めた。給餌養殖では淡水・通し回遊魚4.8、底魚3.9、浮魚その他3.4、甲殻類8.2、無給餌養殖・天然漁獲では0.2であった(PW)。既存モデルの豆類0.7、鶏肉3.4、豚肉4.7、牛肉8.5との比較から、牛肉のかわりに無給餌養殖や天然漁獲の魚介類を食べることで窒素による環境負荷を低減できると考えられた。


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