| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-319 (Poster presentation)

サンショウウオ属を対象としたユニバーサルプライマーによる環境DNAの検出

*冨田勢(神戸大・発達), 神松幸弘(立命大・グローバル), 山中裕樹(龍谷大・理工), 永野昌博(大分大・教育), 源利文(神戸大・発達)

生物多様性の保全において、種の生息域を正確に把握することは非常に重要である。しかし、希少さや発達段階における生育環境の違いにより、その産卵場所や生息地を見つけることが困難な種も多く存在する。そこで近年、生物の排泄物等に由来すると考えられるDNA断片を検出する、環境DNA分析手法の利用が進んでいる。この手法は、水を汲んで解析を行うだけでよいため、従来法よりも迅速かつ低コストで調査を行うことができる。

サンショウウオ属(Hynobius)は、世界で35種が記載されており、そのうち21種が日本の固有種である。日本産のほぼすべての種が環境省のレッドリストに掲載されており、保全のためには正確な生息情報の把握が必要である。しかし幼生期と繁殖期以外の個体は、陸上の人目につきにくい場所に生息するうえ、特に流水性の種は岩の裏に卵塊を産み付けるなど、繁殖期においても個体及び卵嚢の発見が非常に難しい。

本研究では、ミトコンドリアDNA内のシトクロムbおよび12S rRNAの2つの領域に、サンショウウオ属にのみ共通のユニバーサルプライマーを設計し、同一検出系の複数種への適用を試みた。ヒダサンショウウオとオオイタサンショウウオの生息地にて採水を行い、設計した2種類のプライマーそれぞれで、この2種の環境DNAの検出に成功した。オオイタサンショウウオのサンプルにおいて、シトクロムbプライマーでは、生息地13地点中1地点しか検出出来なかった。一方12Sプライマーでは、13地点中11地点の検出に成功したため、非常に高い確立で検出可能であることがわかった。本検出系により、これまで行われてきたサンショウウオの調査がより簡易化されることが期待できる。


日本生態学会