| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-322 (Poster presentation)
二次的自然である水田環境をハビタットとする水生昆虫の減少や絶滅が問題となっている。特にゲンゴロウ類は減少しやすい傾向にあるとされている。長野県上伊那地方の本田調査における先行研究(榊原ら・2014)では、ゲンゴロウ類を含む水生昆虫は市街地に小型種、中山間地には大型種が分布しており、本分類群の立地の指標性が指摘された。さらに大澤ら(2014)は同地方での複数の水辺環境での調査から、ゲンゴロウ類を含む水生昆虫のハビタットとして特に土水路が重要であることを指摘した。本研究では水田地域におけるゲンゴロウ類の詳しい生息状況を把握するため、調査対象を中山間地に絞り、さらに主要なハビタットであるため池を含んだ調査を実施した。さらに各止水環境の立地条件を明確にし、ゲンゴロウ類の生息条件を明らかにすることで保全策の検討を行うことを本研究の目的とした。今回は同地方において、ため池のある中山間地域から3地区を選定した。各地区の調査範囲は直径500m円内とし、個体数調査はたも網によるすくい取りとトラップを併用した。立地環境調査として水深計測および水生植物相を測定記録し、土地利用調査や聞き取り調査も実施した。その結果、3地区で9属13種1345個体のゲンゴロウ類を捕獲した。出現種13種の内、環境省版・長野県版RDBに記載のある希少種はゲンゴロウ、クロゲンゴロウなど5種であった。本調査では長野県に生息するとされる16属32種のうち8属12種が捕獲されたことから、上伊那地域のゲンゴロウ類は比較的に豊富であるといえる。希少種のうち4種については、上伊那地域において生息できる環境が限定的で個体数も少ないため、優先的に保全する必要があると考えられた。