| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-323 (Poster presentation)
農業形態の変化や農薬使用により、かつて水田で普通に見られた植物が絶滅危惧種となっているものが多い。本研究では棚田跡地の埋土種子集団と散布体動態を解明し、希少植物の保全に資することを目的とした。調査地は新潟県佐渡島の標高260-300m、耕作放棄後約40年が経過した棚田跡地で、隣接して多数のビオトープが造成されている。
森林群落とヨシ群落の棚田跡地それぞれ3筆と4筆で現況植生を調査し、1筆につき3カ所から深度5-15cmと15-25cmの土壌を採取し、深度別に混合してワグネルポットでまきだし実験を行った。2回反復で水位は5cmと常時湿潤の2条件とした。1筆内での埋土種子集団のばらつきを見るため、上記の土壌を混合せずに2反復で小容器を用いてまきだし実験を行った。ヨシ群落の調査地付近に2m×1mの新規ビオトープを2カ所に造成し、前述と同深度の土壌を投入し植生と水環境を定期的に測定した。造成2年目に新規ビオトープ脇に2個のシードトラップを設置し風散布種子を調べた。
ワグネルポット実験の結果をMDSで解析した結果、埋土種子組成は土壌採取地点よりも土壌深度による違いが大きかった。小容器による実験では1筆内の埋土種子組成はヨシ群落と森林群落の各1地点以外は、1筆内でもかなり異なっていた。
新規ビオトープでは造成1年目に18種、2年目に16種が出現したが、約半数の種が入れ替わっていた。1年目にはレッドリスト記載種が4種出現したが、2年目にはチリフラスコモ、イトトリゲモが消失し、ガマや湿性植物の侵入が見られた。これは2年目が小雨だったため、ビオトープが水深5cm未満の期間が長かったことも影響していると考えられる。シードトラップ調査よりガマは風散布で侵入したと考えられる。消失した2種は隣接地でも攪乱のないビオトープで消失していたため、これらの保全には適度な攪乱が必要である。