| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-334 (Poster presentation)
ポイントセンサスは最も一般的な鳥類のモニタリング手法だが、専門家不足などの欠点が指摘されている。その欠点を補う手法とされる録音による調査は、これまでは主に出現種の把握のみに用いられ、個体数を推定する手法は確立されていない。本研究では、生物多様性のホットスポットとして知られる奄美大島において鳥類モニタリングを行った。奄美大島の森林にはルリカケスなど奄美群島の固有種や絶滅危惧種を含め多様な鳥類が生息している。種組成や個体数の推定に録音法を用いる可能性を探ることを目的とし、代表的な森林域において録音法とポイントセンサスで把握される鳥類相を比較した。
調査は、多くの種の繁殖期にあたる2015年4月~5月に、6か所の森林域で行った。それぞれの場所で3~7のポイントを設け、ポイントセンサス及び録音を朝と夜に実施した。朝のデータを聞き取り、録音されている鳥の種類を記録した。2つの手法による確認種を比較したところ、それぞれの平均種数に有意差はなく、種組成の類似度も高く、総確認種は全て一致した。また、一部の種については再度録音を聞き、さえずりの回数を数え、ポイントセンサスでの推定個体数と比較した。リュウキュウコノハズク(NT,IUCNレッドリスト)、アカヒゲ(NT)ではさえずりの回数がポイントセンサスでの個体数に有意な正の効果を示していた(GLM、p<0.01)。
両手法で確認できた種にはほとんど差がなく、調査対象の森林域ではポイントセンサスで把握できる鳥類相を、録音法で把握できた。録音法は、同時に複数ヶ所で調査が可能であり、有効なモニタリング手法になりうることが示唆された。一部の種では、さえずりの回数は録音データから個体数を推定する手段になると考えられる。
(共著者の追加:井上奈津美(東大院・農))