| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-335 (Poster presentation)

干拓された湖沼における水生植物再生の可能性の検討 -印旛沼での事例ー

*舘野太一(東邦大・理), *林紀男(千葉県立中央博物館), *山ノ内崇志(東邦大・理), *西廣淳(東邦大・理)

戦後から1960年代にかけて、日本の平野部の浅い湖沼の多くでは、干拓、水位変動の消失、ヘドロの堆積等の著しい環境の変化が進行した。これらの環境変化は、水生植物の生育条件の喪失・劣化を招いたと推測され、今日では、この様な湖沼での水生植物の再生が、生物多様性保全や水質浄化の観点から重要な課題となっている。千葉県北西部の印旛沼は環境の変化に伴う水生植物の喪失が特に顕著な湖沼である。かつて40種以上見られた水生植物が、現在では20種未満しか確認されていない。本研究では、水生植物の再生のための基礎的な知見を得るために、(1)干拓地における散布体バンク(土壌・基質中の発芽可能な種子や胞子の集団)の存在状況、および(2)ヘドロの堆積、冬期の水位低下が水生植物の実生出現に与える影響を明らかにすることを目的とした。(1)について、干拓地で採取した土壌の撒き出しによる実生発生法、および干拓地を掘削して造成された池での植物相調査を行った。その結果、干拓地の土壌には、沼内の散布体バンク調査では見つかっていない植物種を含む多様な水生植物の散布体が含まれる事が明らかとなった。また、(2)について、沈水植物とオニビシを対象に実験を行い、その影響を検討した。その結果、沈水植物であるシャジクモはヘドロの堆積により、実生の出現に制限を受けている事が示唆された。本研究より、干拓地の散布体バンクを利用する事で、印旛沼流域の多様な種の系統維持が実現できる事が示唆された。また、沼内の植生再生では、ヘドロの除去管理が重要になる事が示唆された。これらを踏まえて、今後は、沼内および干拓地においてそれぞれ効果的に再生事業を行っていく事が重要であると考えられる。


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