| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-336 (Poster presentation)
滋賀県にはともに琵琶湖固有であるオオガタスジシマドジョウCobitis magnostriata(以下、オオガタ)とビワコガタスジシマドジョウC. minamorii oumiensis(コガタ)の2種が分布している。近年、両種の急減が報告されており、両種の保全が必要である。しかし、両種の再生産に関する定量的な研究は見当たらない。また、両種は形態が酷似しており、特に稚魚期は同定が困難である。したがって、本研究では、PCR法を用いて両種を判別し、滋賀県高島市のビオトープ池における両種それぞれの繁殖期、繁殖環境、再生産個体の分布と成長を調査した。
本調査地では、前日に通水をした2015年5月9日から7月4日に落水するまで絶えず両種が遡上・滞在していた。オオガタは周年水のある水域に産卵するとされていたが、コガタと同じく一時的水域で産卵しており、両種は繁殖時期、繁殖場所ともに、大幅に重複していた。
オオガタとコガタの稚魚の個体数は、両種とも同時期にピークを迎え、同様の消長を示した。また、両種の親魚は調査期間を通じて本調査地に遡上・滞在していたにも関わらず、体長の小さな稚魚は6月中頃以降ほとんど採捕されなかった。このことから、両種とも本調査地に通水した後、比較的初期に産卵した個体のみが再生産を成功させたと考えられた。この推測が正しいとすれば、比較的繁殖期が早いオオガタが有利であったと考えられる。
7月の本調査地では、コガタのオス1に対して、オオガタのオスは6ほどの比率で存在したため、コガタのメスが出会うオスは必然的にオオガタのオスの方が多かった。このことから、オオガタのオスからコガタのメスへの繁殖干渉(種間での配偶行動による繁殖成功度の低下)が生じていた可能性がある。