| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-340 (Poster presentation)
近年、全国的にニホンイシガメ(以下イシガメ)が減少し、その原因の1つとして外来種(クサガメ、アカミミガメ)の増加が指摘されている。しかし、外来種との相互作用と個体数減少の因果関係に関する知見や広域的な生息数に着目した現状把握は不足している。本研究では、MaxEntモデルを用いて推定した3種の生息適地が広範囲に重複した千葉県において、局所個体群の生息密度(モデル1)、生息密度と密度指標の関係(モデル2)及び密度指標と環境要因の関係(モデル3)という3つの推定を同時に扱える統計モデルを構築し、カメ類の実個体数の推定と外来種による影響を推測した。
モデル1・2では標識再捕獲調査に基づく局所個体群の生息密度、CPUE(1罠日当たりの捕獲数)を生息密度に換算する係数(捕獲効率)の推定を行った。モデル3では千葉県の1km四方計103メッシュにおいてのべ332回の調査を行い、CPUEを6つの環境変数から説明する統計モデルから広域的にCPUEの分布を推定した。これらのモデルを階層ベイズモデルとして実装しカメ類の個体数を推定した。
ベイズ推定の結果、イシガメの密度が高い地域は、外来種の密度が低い房総半島南部の一部に限定的に存在し、密度が低い千葉県北部では外来種の密度が高く排他的ともとれる個体数分布パターンを示した。総個体数の推定値は、イシガメは8.6万個体(95%CL : 3.5万 – 23万個体)、クサガメの152万個体(65万– 350万個体)、アカミミガメの31.4万個体(10万–110万個体)となった。これらの結果より、房総半島南部は千葉県に残されたイシガメの最重要保護地域であるため、継続的なイシガメ個体群のモニタリング調査と外来種と交雑個体の除去を行うべきである。