| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-345 (Poster presentation)
ホタル成虫は、雌雄や活動内容により、草本、樹木、空中など異なる空間を利用することが観察されている。卵、蛹、幼虫の調査は飼育実験などを通じ基準値などが設けられ詳しく検討されているが、成虫の生息に影響を及ぼす要因については詳しく検討されておらず、成虫の生息に適した環境の把握と整備の重要性が指摘されている。そこで本研究では、樹木に着目し、成虫が樹木をどのように利用するか検討することとした。
調査は、滋賀県内の河川で行い、各河川どのような環境をホタルが好むかを細かく検討するため、1本の河川を、河川にかかる橋や、樹木植生の変化を境として、1本の河川の中でさらに細かくブロック分けし、各ブロックごとに、成虫個体数調査及び、環境要因調査を行った。
成虫個体数密度と関連する環境要因を抽出するため、一般化線形モデルを構築した結果、ゲンジボタルでは、樹冠被度との間に有意な正の関係が認められ、ヘイケボタルでは、水面から枝までの高さ、樹木丈との間に有意な正、照度との間に有意な負の関係が認められた。また、成虫個体数密度と樹種に差があるか検討するためにSteel-Dwassの多重比較検定を用いて解析を行った結果、両種ともに、広葉樹と、針葉樹、樹木なしとの間に有意な差が認められた。
両種ともに広葉樹を利用することは、広い葉を昼夜の休息場所として利用していたと考えられる。ゲンジボタルについては、既存研究で樹冠被度が覆いすぎると成虫に負の影響を及ぼすと言われており、本研究とは異なる。その要因として、樹冠被度が高いと照度が暗くなり、休息場所として利用していたと考えられる。ヘイケボタルについては、ほとんどが広葉樹を利用していたため、大きな樹木を休息場所として利用していたと考えられる。