| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-346 (Poster presentation)
日本の草原面積は、かつては最大で約3割を占めていたが今では1%まで減少したと言われる。外来牧草が播種されていない古くからのスキー場は在来植物が豊かな半自然草原になっているが、スキー場管理のための秋一回の刈取りでは高茎草本の優占度が高まり、植物の多様性が減る可能性がある。本研究は、スキー場の半自然草原において、土壌撹乱と刈取りという二種類の人為管理が植物の多様性に与える効果を検証した。
2013年10月に長野県峰の原高原スキー場に耕起区(2013年10月に深さ20cmまで耕起)・二回刈取り区(2014年8月と2015年7月に高さ20cmで刈取り)・対照区の1×1mコドラートを20個ずつ設置した。いずれも、毎年10月にスキー場管理のために高さ約10cmで刈取りした。2014年9月に各コドラートの1/10面積を地際で刈取り種ごとの乾重を求めた。2014年と2015年に維管束植物各種の出現と繁殖有無を調べた。
その結果、総乾重と優占種ススキの乾重が両撹乱区で大きく低下した。繁殖種数は2014年には両撹乱区で低かったが、2015年には処理区間で違わなかった。コドラートあたりの種数は処理区間で違わなかったが、コドラート間の種組成の異質性が両撹乱区で大きく、多数のコドラートあたりのガンマ多様性が増加した。ガンマ多様性は、2014年には耕起区で、2015年には二回刈取り区で最も高かった。
以上から、耕起は多様性を高め、その効果は少なくとも二年間は続くが、一年目には繁殖に悪影響があることが分かった。夏の刈取りも多様性を高めるが、その効果の大きさや繁殖への悪影響は刈取り時期によって変わることが示唆された。現在、各植物種の特性と処理区に対する反応との関係を解析している。