| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-348 (Poster presentation)

都市公園における湿地再生の可能性~東京都での検討~

*白土智子(東邦大・理),林紀男(千葉県立中央博物館),山ノ内崇志(東邦大・理),西廣淳(東邦大・理)

都市公園は人々のレクリエーション・憩いの場であると同時に、都市的環境に存在する生物の生育・生息空間としての役割を担いうる場所である。公園の多くが「池」を擁しており、そのような場所では湿地の生物多様性保全の機能が期待できる。しかし、水質の悪化や人工護岸化、外来種の移入、水源の枯渇などにより、生態系の劣化や生物多様性の保全機能の低下が生じている場所が多い。これらの生態系の修復には基盤となる植生の回復が必要である。本研究では、都市公園における水生植物の再生可能性の検討に資するため、文献情報に基づく植物相の把握と、底泥中の水生植物の散布体バンクの種組成の調査を行った。

文献調査は、井の頭池(井の頭恩賜公園)、三宝寺池(石神井公園)、小合溜(水元公園)などの東京都内の公園にある自然に成立したと考えられる池沼を対象に行った。散布体バンクの調査は、実生発生法を用いて井の頭池と小合溜を対象に行った。

文献調査の結果を用いて、過去に一度でも確認されたことのある水生植物種の組成を比較した結果、池沼の成因により種組成が異なる可能性が示唆された。散布体バンク調査では、井の頭池からは13分類群、小合溜からは11分類群が確認された。2つ池沼を総合すると、合計23分類群となり、そこには環境省レッドリスト掲載種であるニッポンフラスコモ、ナガホノフラスコモ、ハダシシャジクモ、シャジクモ、東京都レッドリスト掲載種としてはコウガイモなど計4種が確認された。これらの種の多くは池の植生から消失した種であり、池の環境が改善されれば、再生する可能性が示唆された。適切な自然再生を行うことにより、都市公園にある自然池沼に由来する池は、水生植物保全に資する場となると考えられる。


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