| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-349 (Poster presentation)

京都市街域におけるケヤキ・エノキ・ムクノキ樹林及び孤立木の変遷とその要因

*木村元則(京大・農学研究科),今西純一,深町加津枝,柴田昌三(京大・地球環境学堂)

京都市街域には様々な樹林地がみられ、中でもケヤキ、エノキ、ムクノキ(以下、ニレ類)の樹林と孤立木が多い。しかし、都市のなかの樹林地は都市化の影響を強く受け消失傾向にあり、京都市街域においても社叢へのマンション建設や道路拡幅に伴う孤立木の伐採が行なわれている。本研究では、京都市街域におけるニレ類保全の指針を検討するため、ニレ類の分布調査(坂本ら1987)の結果を追跡しその分布の変遷を追うことで消失の要因を分析した。

坂本ら(1987)の調査資料と過去と現在の航空写真をもとに1987年のニレ類樹林と孤立木の分布図を作成し2015年のニレ類の残存状況を集計、分析した。消失の要因を調べるため、樹林と孤立木の生育場所に関して過去の土地利用、現在までの土地利用変化の有無を、加えて孤立木に関しては樹木保護制度による指定状況、50m圏内の建蔽率を記録し、残存状況との関連性を分析した。

樹林は一部で拡大傾向がみられたが、全体で約9ha(9.6%)縮小していた。林冠面積の頻度分布を過去と現在で比較したところ、樹林の分断化が示唆された。以上の主な要因として、社寺における建物や駐車場の整備があげられた。孤立木は、ケヤキが60本(43.2%)、エノキが111本(48.1%)、ムクノキが78本(55.7%)消失していた。分割表の検定から、種の違いは消失と関連しないことがわかり、サイズ別集計でも同様の結果がえられた。一方、土地利用は消失と関連し、公園や神社で残存し住宅庭で消失しやすいことがわかった。また、土地利用変化が消失の主要因となっていた。樹木保護制度による指定は残存につながっていたが、条例による規制のない16事例のうち2事例で消失が確認された。また検定の結果、孤立木周辺の建蔽率が高いと消失しやすいことがわかった。


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