| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-356 (Poster presentation)
環境サンプル中に存在するDNAを総称して環境DNAと呼ぶ。環境DNA分析手法は生物多様性の評価を行う上で注目されており、主に水中生物を対象に行われている。近年では湖底の堆積物から環境DNAが検出できると言われているが、野外止水域での調査や堆積物環境DNAについての特徴はまだ詳しくわかっていない。本研究では野外ビオトープの水サンプルと堆積物サンプルについてDNA残存時間を比較した。また、自然湖沼における堆積物環境DNAの検出と、水中環境DNAとの情報量の比較を行った。
まず、野外ビオトープの同じ地点からとった水サンプルと堆積物サンプルを同じ環境に静置し、DNAの減少率を比較した。その結果、DNA減少率に有意な差があることが明らかになり、堆積物と水に含まれる環境DNAの残存時間が異なることが示された。次に野外調査では、琵琶湖の内湖である伊庭内湖の4地点について堆積物サンプルと水サンプルをとり、コイ(Cyprinus carpio)、オオクチバス(Micropterus salmoides)、ブルーギル(Lepomis macrochirus)の3種を対象に環境DNAの定量を行った。DNAコピー数に差があるかを検証した結果、いずれの種についても単位重量あたりでは堆積物の方が、DNAコピー数が多いということがわかった。また、MiFishプライマーを用いた魚類環境DNAのメタバーコーディングを行い、堆積物サンプルと水サンプルで種組成を比較した結果、水の方が検出種数は多かったがサンプルの単位重量あたりのリード数、検出種数ともに堆積物の方が多く、堆積物のみで検出された種もあった。
堆積物から環境DNAを検出することで、多様性の評価のみでなく過去の生物相の復元や、生物の住み分けなどを検出することができるようになるかもしれない。