| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-357 (Poster presentation)
不適切な放牧活動により砂丘の再活動が引き起こされている中国北部半乾燥地域ではこれまで、草方格の設置や植物の導入による砂丘固定対策が実施されてきた。これらの対策技術の適用効果は、導入種の定着・成長に関わる生理生態的特性や、地形・土壌などの自然立地条件の影響を受ける。とくに風食抑止による地表面の安定化のプロセスは、対策適用後比較的短期間で進行する事例も報告されていることから、初期段階での詳細なモニタリングと評価が必要である。本研究では、中国内蒙古フルンボイル草原を対象に、在来牧草種を用いた植生回復技術施工直後の砂丘地において、混播された生態的特性の異なる2種(Elymus spp.とCaragana microphylla)の生育を種ごとに調査し、初期段階の生育に影響を及ぼす地形的要因を検証した。
方形区全体植被率、各2種の植被率、平均高、Elymus spp.の結実個体数を目的変数、経過年数、斜面方位、斜面位置を説明変数として回帰木を作成した結果、初期段階の生育は、2種とも斜面方位という地形的要因に影響を受けており、東斜面での生育が良好である傾向が認められた。これは、東斜面が乾燥期(3 ~ 5月)に風下側に位置し、風食の影響が緩和されたためと考えられた。また、Elymus spp.では播種後1年目から斜面方位の影響が確認されたのに対し、C. microphyllaでは播種後2年目からのみ確認された。さらにC. microphyllaの平均高は経過年数とともに上昇したのに対し、Elymus spp. では播種後2年目に低下した。これらの差異はいずれも、両種の初期成長特性の違いに起因するものと推察され、混植による看護効果の可能性が示唆された。