| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-361 (Poster presentation)

トキの目線から「トキと暮らす郷づくり認証制度」の有効性を検証する

*小町亮介 新潟大学関島研究室

世界各地で種の再導入事業が行われている中、人為的干渉の多い環境への再導入は、その後の生息地管理が必要となり困難であると考えられている。かつて日本を含め東アジアで一般的に見られたトキ〈i〉Nipponia nippon〈/i〉は、農地を採食場所とする鳥類であり、新潟県の佐渡島で再導入の取り組みが行われている。佐渡市はトキの生息地管理と農業振興の一環として「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」を制定し、水田への江の設置やふゆみずたんぼの実施などを組み込んだ環境保全型の農地管理を推し進めてきた。本研究ではトキの農地利用を規定する要因を検証し、認証制度の要件見直しを含めた改善策を提案することを目的とした。2010年度の積雪期、融雪期、水入れ期、最高分げつ期、および刈田期と水田環境が大きく異なる5期に区分して解析を行った。トキの位置情報より農地でのトキの在不在を応答変数、認証制度の要件を含む局所要因および景観要因を説明変数としてロジスティック重回帰分析を行い、それぞれの時期に対してトキの農地利用に影響する環境要因を抽出した。ロジスティック重回帰分析の結果、積雪期において農地とねぐらとの最短距離に有意な正の関係が見られた。また、水入れ期においてトキの利用と半径200m内の広葉樹および針葉樹の面積との間に有意な正の関係が見られた。さらに、半径600m内にある魚道を設置した水田数は、両時期においてトキの農地利用を誘引しており、魚道設置水田の面的な効果が重要であることが示された。発表では、融雪期、最高分げつ期および刈田期の解析結果を含めて各時期の考察を行い、トキの利用する農地を順応的に管理していくための提案を行う。


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