| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-362 (Poster presentation)
過放牧等によって砂丘再活動が引き起こされている北東アジア乾燥地の砂地草原では,禁牧,草方格の設置,植物の播種・植栽等,さまざまな砂丘固定対策が行われてきた。これらの技術には,風食の抑止およびその後の持続的な生産活動の再開を可能にする植生回復の促進が求められる。とくに風食の抑止による地表面の安定化は砂丘固定の初期段階における最も重要な目標であり,その効果が発現する植被率への速やかな回復が求められる。植生回復は,播種・植栽された植物自体の成長とともに,外部あるいは埋土種子から供給される植物の成長によってもたらされる。本研究では,砂丘固定技術適用直後の砂丘地を対象に,とくに侵入種に注目して回復初期段階の植生動態を把握するとともに,植物の侵入に影響を及ぼす要因を検討した。
対象地である中国内蒙古フルンボイル草原では,植生回復に向けた砂丘固定事業として,流動砂丘への草方格および禁牧柵の設置に加え,生態的特性の異なる2種(Elymus spp.,Caragana microphylla)の在来牧草が播種されている。これらが施工された砂丘のうち草方格や播種の有無に関して異なる砂丘を選定し、植生調査を行った。解析は種数・被度に関して,施工内容,斜面位置,斜面方位で比較を行い,また種組成についてDCAを用いて比較した。
その結果,施工直後の初期段階では,1~2年という短期間でも種数,被度,種組成に変化がみられること,施工内容や斜面方位等の地形条件が植物の侵入に影響を及ぼしていることなどがわかった。とくに,草方格の設置や在来牧草の播種は,侵入種の種数,被度を増加させることにより砂丘固定や植生回復に貢献していることが示唆された。