| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-365 (Poster presentation)
中・大型哺乳類にとって水辺とその周辺環境は、採餌場や水飲み場、休息場所、さらにはコリドーとして利用され、重要な生息環境である。外来生物であるアライグマProcyon lotorは高い環境適応力を有しているものの、特に水辺と密接な関係にあり、水生生物の生息にとって脅威となる。よって、効果的な防除方法の検討に向けアライグマの水辺利用の実態を把握することが重要である。そこで本研究では、アライグマの水辺利用の特徴を明らかにすることを目的とする。
調査地は横浜自然観察の森とし、カメラ調査と階層構造調査を行った。カメラ調査では、自動撮影カメラを園内の4ヶ所の水辺に1台ずつ設置した。調査期間は2014年11月7日から2015年11月30日までとし、カメラデータを解析するにあたり、撮影頻度指標としてRelative Abundance Index(RAI)を算出した。階層構造調査ではカメラを設置した地点を対象とし、2015年8月に行った。カメラ位置を中心とした10m×10mのコドラート内において出現した植物種を同定し、種ごとの植被率と各層の全植被率を記録した。草本層については種別に平均の高さも記録した。両調査の結果をもとに、アライグマの水辺利用に影響する要因を明らかにするため、回帰分析と分散分析を行った。
カメラ調査の結果では、全ての地点でアライグマのRAIは他のどの哺乳類よりも高かったことから、園内において水辺を頻繁に利用していると考えられた。また、回帰分析の結果からは、アライグマのRAIと草本層の全植被率に強い負の相関がみられ、下層植生が行動を阻害すると推察された。分散分析の結果からは、2015年2、3月のアライグマのRAIが他の時期と比較して高くなることがわかり、餌となるカエルの産卵の時期に高頻度で出現する可能性が示唆された。したがって本研究からは、アライグマは餌資源が豊富な開けた水辺を選好すると推察された。