| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-375 (Poster presentation)

衛星から熱帯林樹木群集組成の時空間変化をとらえられるのか?

*藤木庄五郎(京大・農・森林生態),青柳亮太(京大・農・森林生態),田中厚志(日本森林技術協会),今井伸夫(京大院・霊長類),鮫島弘光(地球環境戦略研究機関),北山兼弘(京大・農・森林生態)

熱帯における森林破壊・劣化に伴う生物多様性の減少は国際的問題である。そのため、世界各国で熱帯林保全の目標が掲げられている。ところが、その進捗を把握するために必要な生物多様性の評価手法は未だ開発されておらず、定量的な評価手法の開発が緊急の課題となっている。本研究はこの課題に対する一つの解答を提示し、衛星画像を用いた生物多様性の新たな評価手法を提案するものである。本研究では、生物多様性の時空間変化を、樹木群集組成の原生林との類似度に基づき広域に定量化することを目的とした。ボルネオ島の8つの森林管理区(木材生産林)を対象とし、各森林管理区に計50個ずつプロットを設置した。各プロットの樹木群集組成を多変量解析nMDSによって序列化し、得られたnMDS1軸値を樹木群集組成の指標に用いた。その後、各プロットに対応する森林表面の分光反射とテクスチャの情報を衛星画像から取り出し、nMDS1軸値を説明する重回帰モデルを作成した。その後、モデルを衛星画像上に空間外挿することで広域の樹木群集組成マップを作成することに成功した。得られたマップから樹木群集組成の空間変化を解析したところ、木材生産林の樹木群集組成の空間パターンはこれまでの管理(伐採)履歴に強く影響されていることが確認された。さらに、2010、2015年の2時期において本手法を適用し、樹木群集組成の時間変化をみたところ、伐採実施後の樹木群集組成の原生林との類似度は、伐採前と比較して大きく低下していた。以上のように、森林の管理履歴(撹乱の強度の違い)がもたらす樹木群集組成の時空間変化を本手法で正確に定量化できることが示された。


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