| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-381 (Poster presentation)
外来水生植物オオバナイトタヌキモ Utricularia gibba L. は日本にアクアリウムプラントとして導入され、各地で野生化し、在来水生植物との競合などの生態系被害が危惧されている。そこで、本種の繁殖生態に注目し、生態リスクを明らかにすることを目的に調査を行った。
生活史とフェノロジーを明らかにするために奈良市磐之媛命陵の集団で、一ヶ月ごとに調査を行った。また、圃場において交配実験を行い、結果率と結実率を調べた。
野外調査の結果から、オオバナイトタヌキモは春から秋にかけてバイオマスを増やし、密なマットを形成した。7~10月にかけて繁殖器官への資源分配を増やして盛んに開花した。冬も草体は枯れなかった。訪花昆虫はほとんど観察されず、結果率と結実率は最も高い月でもそれぞれ54.5 %、43.4 %だった。また、交配実験では、強制自家受粉させた花が最も高い結果率(70.3 %)を示した。人工的に花粉を供給すると有意に結果率が上がったが(U検定 p < 0.05)、結実率は低く(32.3%)、有意な差は見られなかった(U検定 p > 0.05)。
近年シノニムとして扱う見解が増えている在来種イトタヌキモUtricularia exoleta R.Br. は柱頭と葯が接し、自動自家受粉を行う。しかし、オオバナイトタヌキモの柱頭と葯は接していなかった。P/O比も前者は20.8、後者は34.9であった。
以上のことより、オオバナイトタヌキモは主に無性生殖によって水面に広がり、在来水生植物の生育地を奪う危険性があることがわかった。また、結果には花粉制限が生じており、結実率を制限する何らかの要因が働いていることが示唆された。一定の種子は形成されるので、有性生殖によって分布を拡大する可能性もある。在来種イトタヌキモと受粉様式が異なるため、本種は外来種として区別して対応することが適切である。