| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-382 (Poster presentation)
水生植物オランダガラシNasturtium officinale R.Br.はクレソンとして広く知られているが、生態系への影響が危惧されるとして「生態系被害防止外来種リスト」に挙げられている。本研究ではその生態リスクを明らかにするために、交配実験、訪花昆虫観察、種子発芽実験を行った。
交配実験と訪花昆虫観察は兵庫県の5集団で行った。交配実験の結果、白瀬川以外の集団の平均結実率は72%、強制他家授粉で71%、袋掛けや除雄を施すとそれぞれ44%、39%まで下がった。除雄した上で袋掛けをするとほとんどの果実で結実率0%であった。訪花昆虫として鞘翅目、鱗翅目、双翅目、膜翅目、半翅目、総翅目の幅広い分類群の昆虫が観察された。花当たりの平均訪花頻度と除雄花の平均結実率の間には高い相関がみられた(r = 0.86)。この結果から自家受粉と他家受粉の両方が種子生産に寄与しており、無融合生殖の可能性はないと考えられる。
種子発芽実験は前処理(無処理、4℃2週、4週、30℃2週、4週)、発芽温度(変温:15-25℃、恒温:10℃、15℃、20℃、25℃、30℃)、光条件(明、暗)および酸素条件(好気、嫌気)を組み合わせて行った。その結果、変温と15℃恒温条件でよく発芽し、高温(25,30℃)では比較的低い発芽率を示した。明条件と好気条件が発芽を促進した。実験を続けると変温、高温条件で徐々に発芽率が伸びた。種子の休眠解除には30℃の前処理が効果的であり、これは夏に休眠して秋から発芽する多くの集団の生活史をよく説明する。また長期間にわたって発芽が続くことは攪乱頻度の高い河川において適応的と考えられる。
本種は特に湧水環境での出現頻度が高く、その高い繁殖力は在来種に深刻な影響を与えうると考えられた。