| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-385 (Poster presentation)
外来のトカゲ類であるグリーアノールは、小笠原諸島の固有種であるオガサワラシジミなどの昆虫を捕食しておりその減少を招いているほか、在来トカゲ類であるオガサワラトカゲの競争者及び捕食者とも言われている。この研究では、アノールがいない向島と両者が存在する母島での分布を調査し、オガサワラトカゲが本来好む環境を明らかにするとともに外来種の存在による在来種のニッチシフトの有無を検討した。
野外調査ではラインセンサスにより両種の地図上での出現地点と地面からの高さを記録した。環境要因として標高データ(DEM)をもとにした地形の解析により、日射量、集水面積、ラプラシアンなどを算出した。また、歩道上では50m区間毎、舗装道路上では100m区間毎に全天写真を撮影して林冠による光環境の記録を行い、道路タイプとDEM地形変数を用いてルート上の光環境の推定モデルを作成した。これらの環境変数について、生物を発見した地点と、ルート上の一定間隔おきの地点(バックグラウンド)の環境データをGISで読み込み、生息環境を解析した。
グリーンアノールは舗装道路脇に多かったが、乳房山においては舗装道路から遠く離れた山頂付近の極相の低木林に極めて多くの個体を発見することができた。また南崎歩道の崩壊地の周辺の低木林でも発見された。対してオガサワラトカゲは、暗い地点を含めて全ルートにおいて全体的に分布していた。相対光強度を比較したところ、グリーンアノールはオガサワラトカゲよりも明るい地点で多く発見された。このように外来種グリーンアノールと在来種オガサワラトカゲの分布には光強度が関係しているが、グリーンアノールの存在によりオガサワラトカゲの分布環境がシフトしているのかどうかについて、向島のデータも含めて解析した。