| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-386 (Poster presentation)
タイワンシジミは世界中に分布域を拡大し、河川等の侵入先で在来の二枚貝類、特にイシガイ類に悪影響を与えている。国内ではイシガイ類は農業水路を主な生息場所としているが、水路においてもタイワンシジミが侵入している。イシガイ類保全のため、水路におけるタイワンシジミの生息場所利用や、イシガイ類への影響を検証する必要がある。本研究は、滋賀県の水路において、タイワンシジミの密度と水路の物理環境との関係、およびイシガイ類とタイワンシジミとの密度の関係を明らかにすることを目的に行った。
河川の氾濫原と扇状地のそれぞれの地域において10区画を設置し、1区画あたり30コドラート(0.04m2)を設置した。コドラートごとにタイワンシジミの密度、イシガイ類の密度、底面を砂が占める割合、底質の軟らかさ、水深、流速を測定した。氾濫原と扇状地のそれぞれのデータセットごとに、(1)タイワンシジミの密度に水路環境が与える効果の推定、(2)イシガイ類の密度にタイワンシジミの密度が与える効果の推定を、条件付き自己回帰モデルを使用して行った。
解析の結果、タイワンシジミは氾濫原の水路(砂優占、底質の軟らかさ0~205mm、水深16~65cm、流速5~55cm/s)では、砂が多く、底質が軟らかく、水深が深い場所に多かった。扇状地の水路(礫優占、底質の軟らかさ0~198mm、水深1~22cm、流速4~58cm/s)では、砂が多く、底質が軟らかく、水深が浅く、流速が速い場所に多かった。またイシガイ類の密度は、氾濫原ではタイワンシジミの密度と互いに関係がなく、扇状地では負の関係があると推定された。
以上のことから、(1)扇状地の水路では砂底の場所をめぐってイシガイ類とタイワンシジミが競合関係にある可能性、(2)扇状地水路の河床の干出が両者間の生息場所の差異をもたらしている可能性が考えられた。