| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-403 (Poster presentation)
特定外来生物に指定されているウシガエルは繁殖力が強く、高い生息密度で分布する。防除において手捕りや罠などの手法に加え卵塊の除去も効果的である。繁殖に関する知識は防除において重要であるが、ウシガエルの繁殖に着目した既存研究は温暖な地域が多く、北海道のような寒冷地における繁殖生態は明らかになっていない。北海道におけるウシガエルの対策には、北海道に生息するウシガエルの繁殖生態を明らかにする必要がある。オスの繁殖期は鳴き声が合図となり、性成熟の評価は繁殖期と関連性がある。本研究では、北海道七飯町の大沼国定公園に生息するウシガエルの婚活会場ならぬ繁殖場所において、音声録音調査と性成熟解析を実施し、海外との比較から寒冷地におけるウシガエルの繁殖に関する特徴の把握を試みた。
鳴き声は2015年5月26日から9月26日まで、最盛期は6月中旬から8月中旬であった。水温と気温は鳴き声とそれぞれ高い相関があり(|r|=0.62,|r|=0.66)、降水量は相関がなかった(|r|= -0.23)。オスはGSI(生殖腺重量指数)・体長は高い相関があり(|r|=0.65)、メスはGSI・体長・一腹卵数との間にそれぞれ比較的高い相関があった(|r|=0.42,|r|=0.41,|r|=0.72)。抱卵個体6匹の一腹卵数は17,333~40,041個で、29,939±7,444個(平均値±標準偏差)だった。
海外の既存研究と比較すると、北海道ではオスの繁殖期は長く、メスは性成熟を迎えるまでにより大きな体サイズに成長する必要があると判明した。一腹卵数も多く、寒冷地において適応力を発揮していることが示唆される。今後は婚活会場においてカップル成立まで行動を把握するため、ウシガエルに発信機を装着させることも視野に入れ、繁殖に関する調査を継続的に実施することが望まれる。