| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-404 (Poster presentation)

セアカゴケグモの詳細スケールでの発見情報に基づく生息地分析

*前川侑子,松井孝典,町村尚

セアカゴケグモ(Latrodectus hasselti)は,日本では1995年に発見されたオーストラリア原産の外来生物である.交通・流通に伴う非意図的な人為的拡散により分布域が急速に拡大している.咬まれると痛みや発熱などの症状があり,効果的な駆除を行うためには詳細な生息環境を知る必要がある.本研究ではセアカゴケグモの発見情報に基づき,詳細スケールでの生息環境選択を季節および生活史に関連させて分析することを目的とする.今回は,大阪大学キャンパス内(大阪府豊中市・吹田市・箕面市)での2008~2015年に記録された計146回の発見・駆除報告を使用した.成体・幼体・卵嚢,性別,発見場所(屋内・建物外部・野外)別に,月ごとの発見数の変化を分析した.その結果,成体・幼体・卵嚢ともに7~9月に多く発見された.日本での繁殖期は6~8月であり,15日ほどで孵化した幼体は数日後に巣立ち,その後メスは4か月,オスは3か月ほどで成熟するとされている.10~6月の成体の発見数の減少は,交尾後のメスによるオスの捕食,冬季の行動低下と死亡のためと考えられる.また繁殖期以外の幼体の発見数が少なかったが,これは幼体単独では発見されにくいことや,高い死亡率のためであると考えられる.一方,日本における繁殖期以外の1~3月,5月,10~12月にも卵嚢(出嚢前も含まれる)・幼体が数回発見された.これより,日本の気候にまだ順応していない個体・世代が生息している可能性や,日本でも通年繁殖している可能性が考えられる.発見場所をみると,1~3月の寒い時期に野外でも発見され,その多くは側溝で発見された.これより,越冬のための生息環境として側溝を選択していると考えられる.効果的な駆除のため,セアカゴケグモの越冬・繁殖・食物・天敵や死亡に関わる生活要求を調べるため,発見場所の詳細な生息環境の調査が必要である.


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