| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-167 (Poster presentation)

都市林・熱田神宮林における林冠樹種の約40年の変化

*橋本啓史, 松浦文香, 多和加織, 今川公揮(名城大・農), 長谷川泰洋(森林総研)

名古屋市の市街地にある熱田神宮(敷地面積約19ha)において、前回(1975年)総合調査時からの林冠樹種の変化を把握することを目的に、2013年撮影の空中写真(GEOSPACE航空写真2500)をベースとして2014年に現地踏査を行った。なお、前回調査時の社叢は、台風による倒木で林冠ギャップが多数生じていた。

現地調査結果を踏まえながらGIS上で幾何補正した空中写真をトレースして樹冠分布図を作成し、樹種ごとの樹冠面積を算出した。約40年前の樹冠分布図も、報告書からスキャンした画像をGISに取り込みトレースして作成した。

2014年の樹種別樹冠面積はクスノキが最も多く(敷地面積の35%)、次いでムクノキ(19%)、イチョウ(6.9%)、エノキ(5.5%)、ケヤキ(5.3%)、シイ(3.5%)であった。1975年の調査からクスノキ、シイ、カシ類、ケヤキ、ムクノキは樹冠面積を増やしたが、クロガネモチ、イチョウ、クロマツは樹冠面積を減らした。樹林面積に占める常緑広葉樹、落葉樹広葉樹、常緑針葉樹の割合は、それぞれ53%から51%、45%から47%、1.0%から1.1%へとわずかに変化した。

樹冠の置き換わりに注目すると、約40年間で樹種が置き換わらなかった林冠の面積が置き換わった面積を下回った樹種はクスノキのみであった。主な樹種の樹冠からはクスノキの樹冠への置き換わりが最も多かったが、逆にクスノキの樹冠から置き換わった面積の方がそれを上回った樹種は、ムクノキとシイであった。

前回調査時の林冠ギャップを埋めた樹種はクスノキとムクノキが多く、イチョウ、シイが続いた。また、孤立木や参道沿いなど林縁部のクスノキが樹冠を拡大していた。


日本生態学会