| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-172 (Poster presentation)
小笠原諸島では、固有種や希少種の生育環境を保全するため、外来植物の駆除事業を実施している。その中で東京都は、都有地やノヤギ駆除実施地域の周辺において、侵略性の高いモクマオウ、リュウキュウマツ、ギンネムなどを対象に、除草剤による駆除を実施している。これらの外来植物は種子散布能力が高く、連続した在来林内でも、ギャップ等に侵入して小群落を形成する。そのためには、種子散布源を残さないように広域で面的な駆除が必要となる。このような広域な面的駆除における植生変化のモニタリングは、小笠原諸島ではまだ例が少なく、東京都では駆除前後に植生および毎木調査を継続実施している。本発表では、その中から、薬剤駆除後1~2年経過した弟島と兄島でのモニタリング結果を報告する。
調査地は小笠原諸島父島列島に属する弟島と兄島で、どちらも無人島である。2013年に弟島鹿之浜周辺で約10ha、兄島北部で約18ha、2014年には弟島広根山周辺で約13ha、兄島乾沢で約28haで薬剤駆除を実施した。対象エリアには在来林や裸地等も含まれるため、全域を踏査して対象の外来植物を発見次第、駆除を実施した。薬剤はモンサント社のラウンドアップマックスロードを用い、幹にドリルで穿孔し、樹幹注入した。その結果、弟島では場所によって下層植生が回復し、駆除前から定着していた在来種の稚樹の成長が確認された。また、兄島北部では、駆除前はほぼモクマオウの純林だった所に、先駆種のウラジロエノキが高密度に更新し、下層植生が密に覆うという変化がみられた。しかし、同じ兄島北部では、モニタリング箇所外に外来種であるキバンジロウ群落の形成が確認され、新たな外来種の拡大が生じたことを示唆した。このように、駆除による一定の成果が確認されたものの、外来種の侵入・拡大には引き続き注意が必要である。