| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-174 (Poster presentation)
道南の渡島駒ヶ岳(標高1,131 m)では、山頂部で1996, 1998, 2000年に小噴火(主に水蒸気爆発)が発生した。噴火直後には、山頂部に主に火山灰が堆積し、土壌移動に伴うリル形成等が見られた。堆積物が厚い地域では、現在も土壌移動が見られる。これらの噴火に伴う撹乱後の植生回復過程を明らかとするために1996年に調査区を設け、現在まで毎年、植生調査を行っている。調査区は、噴火の影響がない斜面中腹(無害区)、噴出物の痕跡が認められる山頂域(微害区)、数mmの堆積が認められる山頂域(中害区)、および数cm以上の堆積が認められる山頂域(激害区)の4箇所に、それぞれ50 cm × 50 cm の方形区を100ずつ設けた。
計43種の維管束植物が記録された。蘚苔類・地衣類は、無・微害区ではパッチ状に優占している。一方、噴火直後に中・激害区では、蘚苔類・地衣類は、ほとんど定着が認めらなかったが、中害区で2004年から、激害区で2013年から、それらの被度は増加傾向を示した。ミネヤナギは、全域で認められ、被度は山頂域の3つの区では増加しつつあり、特に、激害区では1996年の1.2%から2015年の10.4%までと大きく増加した。一方、無害区では、ミネヤナギ被度は25%前後を推移し、大きな変化は見られない。シラタマノキの被度は、全区で増加していた。ヒメスゲは、激害区では1.7%から6.7%に20年間で増加した。同種の優占度は、無・微・中・激害区の順に高くなり、駒ケ岳に分布する種の中では、噴火性撹乱(土壌移動)にもっとも適応した種と思われる。ススキ・ヒメノガリヤスは、被度は低いながらも、被度の変動パターンはヒメスゲと類似していた。以上のことから、噴火から数年間は明瞭な植生変化がみられないが、撹乱強度の低下につれ、主に低木およびイネ・スゲ類の被度増大により植生回復が針広しているといえる。