| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-175 (Poster presentation)

アフリカ熱帯山地雨林の拡大過程における止まり木効果の重要性

藤田知弘/京都大大学院

1.はじめに:熱帯林の減少は広く認識されているが,一方で,近年,熱帯林と疎開植生が隣接する地域では周辺疎開植生への熱帯林の拡大が報告されている.熱帯林の拡大メカニズムとして, “核生成化作用”と呼ばれるものがある.核生成化作用とは疎開植生に生育する樹木を“核”として,非連続的にパッチ状の熱帯林が形成され,その後,放射状に拡大していく現象を指す.核生成化作用では,“核”木による促進効果(微気象条件の緩和など)が重要とされてきた.しかし,疎開植生に“飛び地”状にパッチが形成される同作用では,熱帯林からの種子の到着過程も重要であると考えられる.本研究では,核生成化作用における種子散布過程の重要性を実証することを目的にアフリカ東南部マラウィ共和国北部ビプヤ高地で調査を実施した.

2.方法:本調査地にはウッドランド内にパッチ状の熱帯林が存在し,その中心部付近にはイチジクのなかま(Ficus natalensis)の大径木が特徴的に生育している.このような植生構造は核生成化作用によって形成された熱帯林パッチの典型例である.そこで本研究ではFicus n.をパッチ状の熱帯林形成の始点(核木)と仮定した.

3.結果と考察:環境条件をFicus n. 樹冠下・ウッドランド優占種樹冠下・オープン(樹冠なし)で比較したところ,樹冠下(Ficus n.・ウッドランド優占種)では,オープンに比べて環境条件が緩和されていた.他方,両樹種の樹冠下では環境条件に大きな差はないことが明らかになった.しかし,自然に生育している幼齢の熱帯林樹種の個体数を3調査区で比較すると,全体の93%がFicus n.樹冠下で見つかった.これらの多く(92%)が動物に種子の運搬を託す動物散布種であった.この結果は,核生成化作用が促進効果のみでは説明がつかず,動物によるFicus n.樹冠下への集中的な種子散布が関わることを示す.


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