| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-176 (Poster presentation)

スギ林に生育する木本種の種子散布と埋土種子集団の形成

山瀬敬太郎,藤堂千景,伊東康人(兵庫農技総セ)

針葉樹人工林の主伐後の更新手法の一つとして、天然力を活かした樹林化が期待されている。そこで、種子発芽による更新可能性を把握するために、木本種を対象に、種子散布の形態と埋土種子集団の形成における種特性を解析した。

調査地は、兵庫県宍粟市赤西国有林のスギ高齢林(42齢級、平均樹高30.8 m)である。斜面の水平方向に計25調査地点(地点間距離は約5 m)を設定し、各地点での種子トラップ法による散布種子量と、実生出現法による埋土種子量を測定した。また、各地点から半径30 m内を毎木調査範囲とし、その中に位置する木本種の成木(樹高2 m以上)を対象に、立木位置と胸高直径を記録した。

種子トラップ法と実生出現法で観察された木本種29種のうち、埋土種子のみがみられたのは12種であり、そのうち9種が先駆種であった。

散布種子がみられた木本種17種のうち、散布種子量が多かったのは風散布型の種子であり、この型の散布距離は成木より約15 mで,成木に近いほど多くの種子が散布されていた。また、重力散布型の散布距離は約10 mであり、成木に近いほど多くの種子が散布されていたが、動物被食散布型は成木との明らかな距離関係はみられず、散布量の多少は距離に依存しなかった。

散布種子量に対して埋土種子量が著しく少なかったのは風散布型であり、急傾斜地あるいは土壌含水率が高い地点で、埋土種子量の減少がみられた。

以上のことから、先駆種の多くは成木が消失以前に散布された種子によって埋土種子集団が形成されていること、成木からの散布距離や散布種子量は種子散布型によって異なること、風散布型は多量に種子散布されているものの、埋土種子集団を形成しているのは散布種子量の一部であり、散布種子量に対する埋土種子量の減少理由は散布箇所の傾斜や土壌含水率である可能性が示唆された。


日本生態学会