| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-180 (Poster presentation)

千歳川遊水地群における施工後初期の植生遷移

*小林慶子,森本淳子,古川泰人,中村太士(北大院・農)

生態系の持つ調整機能を防災・減災対策に活用することを目指した国土計画(グリーンインフラストラクチャー)への関心が高まっている。北海道石狩川水系のひとつである千歳川の中下流部に広がる低平地は、洪水時に石狩川本川の高い水位の影響を約40㎞にわたって長時間受けるため流域に降った雨水の排水ができなくなるという特徴を有しており、およそ2年に1回の頻度で水害に見舞われてきた。この水害対策として、現在、千歳川の本支流に6つの遊水地(総面積:約1150ha;洪水調整容量:約5000万m 3)を整備して洪水時の河川流量を調整する計画が進められている。これらの遊水地に戦後の干拓事業で失われた湿地生態系を再生することができれば、防災・減災機能と生物多様性保全機能を併せ持つグリーンインフラストラクチャーとして多様な機能を発揮する場となる可能性がある。

千歳川遊水地群は、2009年に着工し、2019年までの計画で段階的に整備が進められている。6つの遊水地は、いずれも、農用地として利用されていた用地を掘削して整備されており、施工前(2006-2009年)と施工中(2011-2014年)に国交省北海道開発局による植物相調査が行われている。本稿では、これらのデータを整理して遊水地群の施工前後での植物相の変化を把握することで、遊水地が地域の植物相に与える影響を検討した。

遊水地の湿性植生は、低層湿原(ヨシクラス)の標徴種や水田雑草群落(イネ―イヌビエ群団)の標徴種で構成されていた。このうち、低層湿原の標徴種は、施工前調査でも出現が確認された種であったが、水田雑草群落の標徴種は、施工後に新たに出現した種が多かった。施工初期の遊水地では掘削などの表土攪乱の影響が強く残り、攪乱依存性の高い水田雑草群落の標徴種が出現しやすい環境が提供されたと考えられる。


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