| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-182 (Poster presentation)

宮城県沿岸における大津波後の海浜植生の再生過程

*岡浩平(広島工大・環境), 平吹喜彦(東北学院大・教養)

2011年に発生した東日本大震災は、海岸生態系に甚大な被害を与えた。海岸では、砂浜が消失したり、海岸林が倒伏などの被害を受けたりした。このような被害を受けて、海岸林は現況調査が早期に実施され、広域盛土を伴う大規模造林が実施されてきた。一方、砂浜では、巨大防潮堤が建設されるなど、復旧・復興工事が進むと同時に、海浜植生が徐々に再生しつつあるが、その実態は不明である。そこで、本研究は宮城県沿岸部を対象にして、2011年大津波後の海浜植生の再生状況を明らかにすることを目的とした。

調査対象地は、宮城県の仙台湾沿岸の井土浦、石巻湾沿岸の野蒜と矢本の合計3地域とした。各地域に海から陸に向かって、調査測線を設置して、2.5m四方内の植生と地形の調査を行った。井土浦では、砂浜が消失後に再生した場所に3本、倒壊した海岸林跡地に2本、野蒜には3本、矢本には6本の合計14本の調査測線を設置した。調査は津波から約1年半~3年半に相当する2012年9月~2014年9月の間に実施した。

調査の結果、井土浦の再生した砂浜は、平均被度が2012年は約1%であったが、2014年には約8%まで増加した。井土浦の海岸林跡地では、2012年の約22%から2014年は約35%まで増加した。矢本は、2012年が約5%、2014年が約9%で期間全体を通して低かった。野蒜は、2012年は約28%と高かったが、2014年は約22%まで低下した。以上の結果が示すとおり、大津波直後の植生の再生状況は地域や条件によって異なり、その後の再生状況にも大きな差があることがわかった。


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