| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-183 (Poster presentation)

高山帯と低地帯(里草地)で訪花昆虫相・送粉効率は異なるのか?

*日下石碧(神戸大院・人間発達環境), 丑丸敦史(神戸大院・人間発達環境),石井博(富山大・理)

現在人間活動などの影響(地球温暖化、生息地ハビタットの分断化、CCD、外来種など)により訪花昆虫(特に大型のハナバチ類であるマルハナバチやミツバチの仲間)の減少が報告されている。マルハナバチやミツバチは農業に多く利用され、送粉効率などの研究が先行している。一方で、ハナアブなどのハエ目は大型のハナバチに比べ個体数が多いにもかかわらず、どの程度送粉に寄与しているか明らかになっていない。今後大型のハナバチが減少していく可能性があることを考えるとハエ目がどの程度送粉の機能を担う事ができるかを評価する必要がある。

本研究は訪花昆虫相の異なる高山帯と低地帯の里草地におけるハエ目の送粉への寄与がどの程度あるかを検証した。訪花昆虫相は環境によって異なり、高山帯は主にマルハナバチと小型のハエやハナアブなどのハエ目に限られるが、低地帯はハナバチの種多様性が高く、チョウの訪花頻度も高い。送粉への寄与は、開花の終了した植物の柱頭に付着した自種花粉数とその植物へ訪花した全昆虫数に対するハエ目の割合を算出し、花の形態を含め解析を行った。

その結果、高山帯ではハエ目の訪花割合は関係なく、自種花粉が十分に付着したことから、ハエ目も十分に送粉を行っていることが示された。里草地においては、花形態に関わらず、ハエ目が訪花する事で、自種花粉数が増加する結果が得られた。以上の事からこれまで送粉効率が低いと考えられてきたハエ目も、十分に送粉している事が示唆された。


日本生態学会