| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-187 (Poster presentation)
果実食動物にとって果実は主要な食物である。一方、植物からみると、特に液果では果肉を動物に採食させることで種子を散布していることから、動物と果実の間には密接な関係が存在する。主な果実食動物である鳥類による果実の持ち去り量を推定した報告では、結実した果実のうち1割程度の果実しか樹上では持ち去られておらず、残りの果実は樹上で哺乳類に持ち去られたり、林床に落下し一部が動物に採食されている可能性が指摘されているが、動物種毎による果実持ち去り量の定量的な報告はない。果実を持ち去る動物の中には重要な種子散布者として機能する可能性がある動物種も存在すると考えられるため、結実した果実の行方を解明することは、樹木の種子散布ネットワーク全体を理解する上でも重要な課題である。本研究は、果実食動物種ごとによる結実量に対する持ち去り量割合を定量的に評価することを目的にした。調査ではカスミザクラとウワミズザクラを対象に自動撮影カメラを用いて、動物種毎の採食訪問頻度を算出した。さらに、飼育個体を用いた実験から平均排泄回数を算出するとともに野外で採取した糞に含まれる種子数の測定から、動物種ごとに結実木への訪問1回あたりの採食果実数を推定した。また、結実量の測定は既存の方法によった。その結果、結実量に対してクマ、サル、テン、タヌキ、アナグマといった種子散布に貢献すると考えられる果実食哺乳類によって持ち去られる割合は30%ほどと推定され、半数近くの果実は林床に落下したままか、林床で種子食動物によって採食や持ちされている可能性が示唆された。しかしながら、立地環境や動物の訪問頻度などにより、調査木間でこれらの割合は大きく異なった。そのため、これらの違いに影響する要因については今後の検討が必要である。