| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-189 (Poster presentation)
ツキノワグマが樹木に登って枝を折りながら果実を採食する際に、小規模林冠ギャップが形成される。本研究では、クマ由来の林冠ギャップと樹木の枯死による林冠ギャップの面積が下層の植生構造に与える影響を分析した。
軽井沢町長倉山国有林の落葉広葉樹林に20個のプロット(20×25m)を2009年に設置し、その年と2015年に毎木調査を行った。クマ由来の林冠ギャップ面積を推定するために、クマが折った枝と傾斜角度、樹冠面積を毎年計測し(計6回)、その値と全天空写真からギャップ面積を推定した。植生調査は2015年8月に行った。各プロットに6個の枠(5×5m)からなる小型プロット(10×15m)を1個ずつ設置し、出現する木本種の種名、生活型、被度(6段階で数値化)を階層別(低木層:0.5-2m、亜高木層:2-5m、5-10m、林冠層:10m-)に記録した。林床層(0-0.5m)については、各枠を4個の小型枠(2.5×2.5m)に分割し、種名と生活型を記録した。
各プロットで積算したギャップ面積は、クマの枝折り由来と枯死木由来の間で負の相関が認められた。一般化線形混合モデル(GLMM)(ランダム効果:種名)とAICによるモデル選択の結果、クマ由来と枯死木由来を積算したギャップ面積は、林冠層に出現した各種の枠数に正の効果を与えていた。一方、林床層では、ギャップ面積と上層被度の積算値が各種の出現枠数に負の効果を与えていた。低木層・亜高木層では、ギャップ面積と被度の効果は認められなかった。以上の結果から、両者の林冠ギャップは林冠層の植生構造を発達させる一方で、林床層での更新については負の影響を間接的に与えることが示唆された。