| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-193 (Poster presentation)
左右相称花では、花サイズのバラつきの小ささが、高い送粉効率をもたらすと考えられている。しかし、もし送粉効率への寄与が花器官によって異なるなら、花内で大きさにバラつきがある花器官もあるのではないか?左右相称花は本当に左右対称なのだろうか。
本研究の目的は、蜜量を含む花形質の花内バラつきがどの程度か、バラつきがあるなら訪花行動と関係しているかを明らかにすることとした。材料はキンポウゲ科オクトリカブト、調査地は青森県の田代平高原自然集団で行った。野外調査で花ごとに蜜量・各器官の大きさと花内・個体内花間バラつきを測定し、訪花昆虫の行動として、花あたり訪花頻度・滞在時間、花序内連続訪花数を調べた。また、ランダムフォレストを用いて訪花行動に強く影響しているのはどの花形質かを調べた。
その結果、蜜量は雄期よりも雌期で花内バラつきが大きかった。花器官の花内バラつきは花弁が小さく、側萼片、距、下萼片の順にバラつきが大きかった。このように左右対称性が強い花器官と弱い花器官とがあった。
また、訪花行動に重要な花形質は花弁だった。花弁は連続訪花数にも影響し、花弁が大きいほど蜜量が多いためと考えられる。さらに、滞在時間に重要な花形質は花間の上萼片および花弁バラつきだった。吸蜜距数に重要な花形質は花内側萼片バラつきであり、これは訪花頻度にも影響があった。
花内バラつきが小さかった側萼片が吸蜜距数と訪花頻度に強い影響を示したことと、バラつきが大きかった下萼片と距がポリネータの行動への影響は強くなかったことから、訪花行動との関係が花内バラつきの程度に影響すると言える。一方で、花弁サイズのバラつきは訪花行動への影響は強くなかった。花弁サイズは、雄期の花弁あたり蜜量とに強い相関があり、訪花頻度に最も重要なことから、安定化淘汰が作用していることを示唆しているのかもしれない。