| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-194 (Poster presentation)

イラクサの刺毛形質における世代間エピジェネティック遺伝の可能性

*加藤禎孝 a d , 石田清 b , 菊地淳一 c , 鳥居春己 d (a: 岩手大院連合農学研, b: 弘前大農学生命科 , c: 奈教大教育, d:奈教大自然環境教育センター)

多年生草本イラクサの刺毛形質における誘導防御の世代間エピジェネティック遺伝を調べるため、親世代における茎頂端切除が子世代の形質にどのような影響を及ぼすかを調べた。2013年、奈良公園において、フェンスで囲まれ、ニホンジカの採食圧が低い竹林内に調査区を設定した。調査区内のイラクサを3グループに分け、以下の茎頂端切除処理を行った:(1)2013年春と2014年春に2回切除、(2)2013年春に1回のみ切除、(3)無切除。これらの3グループについて2014年夏の葉の刺毛形質を調べた結果、刺毛密度については以上の処理の影響は認められなかったが、裏面の刺毛数と刺毛長は切除回数が多くなるほど増加する傾向が認められた(第62回日本生態学会大会で報告)。2014年の秋に各グループのイラクサから得られた果実を用いて、2015年に温室内で栽培実験を行い、子世代の刺毛形質をグループ間で比較した。その結果、葉面積・刺毛数・刺毛密度についてはグループ間で有意な差は認められなかった。一方、刺毛長は、葉の表面では無切除と1回切除の間で有意差は認められなかったが、2回切除は他グループよりも有意に長くなる傾向が認められた。裏面の刺毛長についても、切除回数が多くなるほど有意に長くなる傾向が認められた。以上の結果は、イラクサの刺毛形質において、ニホンジカの採食によって現れた誘導防御が、エピジェネティック遺伝により、子世代に伝えられる可能性を示唆している。


日本生態学会