| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-199 (Poster presentation)
植物の中には新芽が緑色ではなく、赤や紫の色をしている種類がある。新芽が通常の緑色ではないことを説明するために、これまで様々な仮説が提唱されて来た。今回、そのうちの二つの仮説「警告色仮説」と「隠蔽色妨害仮説」を赤い葉を好まないオンブバッタを用いて検証した。
警告色仮説は新芽を普通の葉の緑色とは異なる色にすることで、新芽に有毒物質を含むなどの防御手段を講じていることを植食者に向けて宣伝するためのものであるとする説である。この説が正しければ、赤い新芽は成熟した葉より餌としての質が劣っているはずである。そこで、新芽が茶色ないし紫色を呈する安納芋を用いて、新芽の質が悪いかどうかを調べるために新芽と成熟葉をオンブバッタに与えて成長を比較した。その結果、餌によってオンブバッタの成長速度に違いが見られなかった。従って、紫色の新芽は餌として劣っておらず、警告色仮説は否定された。
隠蔽色妨害仮説は緑色の隠蔽色を持った昆虫が赤い葉の上に乗ると目立って危険なので、赤い葉を餌として好まないという説である。この説が正しければ、緑色の昆虫は葉に限らず自分の体色が目立つ背景を避けるはずである。そこで、緑色と赤色に塗り分けた背景の上に緑色のオンブバッタを置き、どちらの色の上に長く留まっているか記録した。その結果、どちらかの色の上に留まろうとする強い傾向は見られなかった。従って、オンブバッタは体色と合った背景色を選んでおらず、隠蔽色妨害仮説も否定された。