| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-201 (Poster presentation)
食害が植物に与える影響は、その強さや頻度のみならず、食害を受ける植物の生活史段階によって異なると考えられる。植物は食害を受けるとさまざまな反応を示し適応度の低下を防ぐが、生活史段階によって、生存率や繁殖の程度、貯蔵資源量などが異なり、食害に対する反応も異なることが考えられる。本研究では、タデ科の多年生草本であるミズヒキを対象に、葉への食害が成長および種子繁殖に与える影響を異なる生活史段階の個体間で比較した。
ミズヒキは、低地の日当たりのよい林床や林縁に広く生育し、多くの昆虫の食草となっている。初春に地上部を展開し、晩夏に開花・結実する。本研究では、ミズヒキの野外集団において、ラメットを多数もつ大型個体と1つのラメットのみをもつ小型個体を対象とした。花序形成期である7月に、無処理、または、人工的に葉を切除する切除処理のいずれかを行い、その後、開花期初期の9月または開花期後期の11月に個体を回収し、地上部乾燥重量、地下部乾燥重量、花数を測定した。9月に回収した場合、小型個体では総重量や花数に処理間で差はなかったが、総重量に対する地上部重量が切除処理によって増加していた。また、処理によって葉数は変化せず、地上部重量の増加は個々の葉の重量の増加などによると考えられた。一方、大型個体では、地上部・地下部重量、花数はいずれも処理間で差はなかった。また、11月に回収した場合、小型個体と大型個体どちらも処理による地上部・地下部重量、花数の変化はなかった。これらのことから、小型個体では、切除後に地上部への資源分配を増加させることで、光合成能力を高め補償を行うことが明らかになった。一方、大型個体では、地上部や貯蔵資源量が大きくよりすばやい補償ができたため、切除の影響が表れなかったと考えられる。