| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-226 (Poster presentation)
植物の根には、菌根菌を初めとする多彩な真菌が共生する。これらの共生真菌は、宿主植物より糖分を受け取る見返りに、ストレス耐性や無機栄養分を提供することで宿主植物の生存性を高めている。しかし、宿主植物や環境要因の差異によって、これら共生真菌の構成がどのように変化するかについてはあまり分かっていない。そこで、日本国内のブナ及びイヌブナ、スイスのヨーロッパブナの根に存在する真菌群を比較した。このうちブナ及びイヌブナに関しては、半年に渡って一ヶ月ごとのサンプリングを行うことで、季節変化が根における真菌の構成に与える影響を解明することも目的とした。
採取したブナ属の根サンプルより全DNAを抽出し、真菌特異的なプライマーを用いてInternal Transcribed Spacer (ITS)領域を増幅し、Ion PGM次世代シークエンサーを用いて網羅的に配列決定した。決定された配列を95%の閾値でoperational taxonomic unit (OTU)としてまとめた後、これら真菌の同定を行った。統計的な解析から、宿主植物の違いが、根における真菌群の構成に有意な違いを生み出すことが分かった。この違いの顕著な一例として、日本国内のブナ属と比較して、ヨーロッパブナの根においては多様な子囊菌が存在することが分かった。また、ブナ及びイヌブナは、ヨーロッパブナと比較してより多くのOTUを共有していた。さらに、同じ宿主植物においても、地理的変化及び季節変化が真菌の構成に有意な違いを及ぼすことが分かった。以上の結果から、比較的近縁の同属異種の植物間でも根に存在する真菌群には明確な違いがあること、また地理的及び季節的な差異が真菌の構成に有意な違いを与えることが分かった。