| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-233 (Poster presentation)
水田生態系に成立する植物群落の種多様性評価を適切に実施するため、景観構造を空間スケールに応じて階層的に評価できるAdditive Partitioning (Wanger et al., 2000)ならびにGLMを用いたvariation partitioningにより解析した。野外調査データの取得は、茨城県南の3地域において谷津田の景観要素を田面、畦畔、法面(袖部刈りとり草地)に3分類し、各地域で構成要素ごとに10圃場を選定した。1筆の水田や1筆の畦畔、連続する斜面刈取り草地からなる各調査地点に1m2の調査枠を5つ設置し、植生調査を行った。さらに、地権者から管理状況のヒアリング調査を実施した。
Additive Partitioningにより全出現種における空間階層別寄与率を解析した結果、田面は比較的局所的な空間スケールが影響していた。一方、斜面刈取り草地については圃場間多様性の寄与率が最も高く、広域レベルの空間スケールが大きな影響を及ぼしていた。
調査対象地の一筆レベルの土地利用GISデータと全ての環境傾度データを利用し、在来植物種数を従属変数、管理形態(刈取り回数)、景観構造(バッファー内の土地利用面積)、立地環境(土壌化学性、光環境)についてGLMを用いたvariation partitioningにより解析した。谷津田域の斜面刈取り草地の多様性に影響を及ぼしている要因は、管理形態が最も影響を及ぼしているものの、景観構造や立地環境もそれぞれ影響している実態が示された。谷津田域においては、谷津田の景観構造、立地環境の歴史性、管理形態の全てが重要であることが明らかになった。畦畔草地については、管理形態(刈取り回数)と景観構造の2つの要因の影響が大きく、立地環境要因の影響は少なかった。田面は管理形態(除草剤の施用)の影響が最も大きく、在来植物の種多様性は田面内の管理でほぼ決定されることが示唆された。