| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-248 (Poster presentation)
突然変異の種類や頻度は、一般にその変異体の親の(遺伝性の)表現型に依存すると考えられる。この依存性が適応進化に与える影響を調べるために、複数の量的形質を軸とする多次元形質空間を考え、各地点に対応する表現型から生じ得る変異体の種類と頻度を、確率分布(変異分布)で表現する。各地点において、それぞれの方向への変異の生じ易さは、変異分布の分散共分散行列(変異行列)によって特徴付けられるが、この行列は地点に依存して変化するだろう。この依存性をそのまま扱うのは厄介だが、形質空間を局所的に非線形座標変換(局所平坦化)することにより、注目する地点付近の変異行列を全て単位行列に正規化できる。その代わり形質空間は歪むので、この依存性は、形質空間の歪みとして解釈できる。本研究の解析により以下の結果が得られた。変異行列の固有値の規模が大きく異なる場合(方向によって変異の起こり易さが大きく異なる場合)には、形質空間の歪みの影響が大きくなり、方向進化や進化的分岐の解析において、歪みの効果を考慮する必要がある。変異の生じ易さは形質によって大きく異なると考えられるので、この結果は重要である。