| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-251 (Poster presentation)
地球環境が劣化する中、植生環境を衰退させることなく人々の生活を豊かにすることが急務の課題である。モンゴルでは遊牧と草原環境との関係が問題とされている。このために食うものと食われるものの関係を表すロトカ・ヴォルテラ式を用いて、草本バイオマス、かん木バイオマス、ヒツジのバイオマス、および、ヤギのバイオマスの4変数によるダイナミカルモデルを構築した。 草本とかん木はロジスティク式で成長し、人間がヒツジとヤギをそのバイオマスに比例して売却するとした。ヒツジは草本をより好み、ヤギはかん木をより好むという事実があり、この条件をパラメータに設定すると、2つの売却率の大きさに応じて以下の6種類の平衡点のうち1つのみが大域安定になることが分かった。(1)4種共存 (2)ヤギ以外の3種の共存 (3)ヒツジ以外の3種の共存 (4)ヒツジとかん木の共存 (5)ヤギと草本の共存 (6)草本とかん木の共存。ヒツジの売却率を高めるとヒツジが減り、直接効果として草本は増えるはずであるが、この場合かん木が増えヤギが増えるという間接効果が勝って、草本が減ることが分かった。
これらの安定平衡点を用いて、最適化モデルを構築し最適売却率を求めた。環境最適化モデルでは草本とかん木のバイオマスの加重和を最大にしたので、売却率を高め家畜がいない状態(平衡状態 (6))が最適となった。経済最適化モデルではヒツジとヤギの売却高を最大にしたので、ヒツジとヤギの単位バイオマスあたりの価格が大きく異ならない場合には、両方の売却率を中くらいの値にして4種共存させることが最適となった。環境と経済双方の最適化モデルでは売却高と植物のバイオマスの価値の和を最大にしたので、経済最大化モデルよりも売却率が高く家畜が少ない状態が最適となった。最後に、環境意識の変化、経済の動向、および、気候変動に対して最適解がどのように変化するかを調べた。