| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-255 (Poster presentation)

横浜市内における止水性水生昆虫相の特徴について

佐野真吾*・吉崎真司 東京都市大学

日本の生物多様性総合評価2012および生物多様性国家戦略2012-2020では、止水域は止水性水生昆虫の生息地として、保全の必要性が指摘されている。今回、調査地とした横浜市も1906年から約90年間で水田が7688haから595ha、溜池が139か所から53か所に減少した報告がなされている(森・島村,2002)。さらに、横浜市での止水性水生昆虫に関する報告は極めて少ないのが現状である。苅部(2011)や佐野(2015)など、一部の地域や種に関する単発的な記録は報告されているが、生物相や生息実態に関する報告はないと思われる。井上・石川(2011)でも報告されているように、市内の溜池や水田は現在も減少しており、それに伴い止水性水生昆虫も詳細な調査がなされないまま絶滅している可能性がある。よって、本研究では、保全の前段階として、横浜市内の止水性水生昆虫相を明らかにし、特徴的な分布を示す種について、周辺環境が出現条件に与える影響について明らかにすることを目的とした。

調査地は、横浜市内の232地点の止水域とし、各地点の止水性水生昆虫の種数を記録した。なお、対象とした止水性水生昆虫は水生甲虫類および水生半翅類である。また、232地点の周辺環境の数値化も行った。本調査では、54種の止水性水生昆虫が確認された。また、コガムシHydrochara affinis (SHARP,1873)を含む3種は、鶴見川水系および境川水系の比較的大きな河川に近隣した水田に出現する傾向がみられた。そこで、3種の出現地数を元に、調査地の周辺環境が与える影響について重回帰分析を用いて判定を行った。結果、コガムシを含む3種の出現条件には、確認地点の水辺の面積および近隣にある河川の面積が影響していることが明らかになった。


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