| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-257 (Poster presentation)
仙台湾名取川河口にある井土東谷地では,東日本大震災の津波による貞山堀の崩落,地盤低下により,約10haの干潟が新規に出現した.この東谷地干潟は地盤高,泥質,塩分などが空間的に不均一であり,空間異質性に伴う多様な群集形成が予測されるが,継続的な調査は実施されていない.新規干潟でのベントス群集構造,およびその時空間変動に及ぼす環境要因を明らかにすることは,震災復興事業に伴う干潟域の改変が続く東北地方沿岸域で,ベントスの生息場所保全を考える上で意義がある.
調査は2015年7~10月に毎月1回実施した.干潟内に15調査地点を設け,直径15 cm,深さ20cmのコアサンプラーを用いて底土を採取し,1mmメッシュでふるい,採集したベントスを同定した後,それぞれの個体数を測定した.また環境要因として,各地点で底土を採取し,珪藻現存量,クロロフィルa量,塩分,含水率,粒度組成(中央粒径値,含泥率,含砂率)および有機物含有量(灼熱減量,全炭素量)を測定した.ベントス群集と環境要因との対応を把握するため,得られたデータを用いて多変量解析を行った.タクサによる解析に加え,機能群(生活形‐食性),分類群(腹足類,二枚貝類,多毛類,十脚甲殻類,その他甲殻類,その他分類群)と環境要因との対応も解析した.
nMDS解析の結果,主に多毛類・端脚類の群集型と十脚甲殻類の群集型に分かれた.CCAの解析結果でも同様の群集型が示され,多毛類・端脚類群集型では含水率・有機物含有率が高く,短尾類群集型では含砂率が高い傾向を示した.分類群による解析でも同様であり,NODF解析ではネスト構造は検出されなかった.以上より東谷地干潟のベントス群集は,生息場所の微細環境に対応した空間分布を示していると考えられた.