| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-258 (Poster presentation)

千曲川中流域における魚類の資源利用パターン

*北野聡(長野環保研), 小西繭(信州大・理), 田崎伸一(有・エコシス), 矢澤諒人(信州大・理)

千曲川中流域は,早瀬,平瀬,トロや淵,ワンド等の多様なハビタットで構成され,ウグイをはじめとする雑食性コイ科魚類が主要な構成種となっている.ところが近年の千曲川では外来魚コクチバスの分布拡大が進行しており,中流域における魚類群集の変化や外来魚による在来魚類への影響について関心が高まっていた.そこで本研究では,千曲市の冠着橋周辺において2014年6月及び2015年5月~7月に,魚類の群集組成と主要魚種の食性について調査した.早瀬,平瀬,トロや淵,ワンド等のハビタットで捕獲調査を行ったところ,2014年には7種50個体,2015年には17種574個体が得られた.個体数では,ウグイ,オイカワ,ニゴイが全捕獲数の38%~53%を占めたが,コクチバスも2014年には28%,2015年には43%と多数を占めた.ハビタット別に詳しく調べた2015年の結果では,早瀬ではウグイが最も多かったが,平瀬,R型淵,トロ,小ワンドの緩流域ではコクチバスが最優占種で,個体数の46~66%を占めた.また,消化管内容物を主要魚種のコクチバスやウグイについて分析したところ,2014年にはコクチバスがカゲロウ類や稚魚を,ウグイがユスリカやカゲロウ類を主に捕食し,コクチバスが高い食地位を占めることが示唆された.一方,2015年の消化管内容物では,両魚種ともにカゲロウ類やトビケラ類で占められ,有意な種間差は認められなかった.この傾向は,安定同位体分析でも支持された.以上のことから,現在の千曲川中流域では,とくに緩流ハビタットを中心にコクチバス優占の魚類群集が成立し,食物網で上位の捕食者あるいは同等の競争者として在来のコイ科個体群に影響を及ぼしていると考えられる.


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