| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-259 (Poster presentation)
自動撮影カメラは,中・大型動物のモニタリングを効率的に行う簡便な調査手法として急速に普及し、世界中で広く用いられるようになっている。しかし、カメラによって得られた情報から,動物の密度・アバンダンスを推定することは必ずしも容易なことではない.Rowcliffe et al. (2008)は,カメラの撮影頻度は,動物の密度,撮影面積,動物の日遊動距離の関数であることを示し,その関係を定式化することで,理論上はどんな動物にも適用可能な密度推定モデルREM(Random Encounter Model)を開発した.しかし,このモデルも,推定が著しく困難な動物の平均移動速度の情報を必要とするため,実際に適用された例は極めて限られている.発表者らは,REMの発想を引き継ぎながら,平均移動速度の推定値を必要としない新たなモデル(REST model; Random Encounter & Staying Time model)を開発した.RESTモデルは,自動撮影カメラの前の滞在時間を動物の移動速度の代替物として利用することで,自動撮影カメラによって得られた情報のみから密度推定が可能な画期的な手法である.今回の発表では,RESTモデルを密度が既知のアフリカの熱帯雨林に棲むダイカー類2種に適用した結果を紹介し,RESTモデルが野外においても信頼度・実用性ともに高い手法であることを示す.さらに,RESTモデルを広域(調査面積約400km2)に設置したカメラに適用した結果を示し,本手法を用いたランドスケープスケールでの密度・分布推定の可能性について考える.