| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-265 (Poster presentation)

北海道の落葉広葉樹林における地表徘徊性甲虫類の活動性と気象要因の関係

丹羽 慈(自然研)

地表徘徊性甲虫類は、採集・同定が比較的容易で、森林・草地・農地・河川敷など幅広い環境に生息し、土地利用の変化などの環境の撹乱に対して敏感に種組成が変化することから、環境変動の指標種として多くの研究で用いられ、国内外の生態系モニタリング調査にも用いられている。しかし、日本に生息する種では、生態特性の詳細が不明なものが多く、環境変化への応答性を定量的に評価した例はあまりない。そこで、年間を通じた採集調査を行うことで、気象要因の変動に対する各種の活動性の応答性を調べた。

2014年4月29日~12月11日に、北海道大学苫小牧研究林内の落葉広葉樹二次林の林床に4個のピットフォールトラップを設置した。約3日(2~4日)おきに、トラップ内に捕獲された動物を回収し、その場で同定・計数してトラップから1m以上離れた地点に放逐することを繰り返した。合計75回の回収で延べ4213個体の甲虫が捕獲され、10回以上採集された24種について解析を行った。連続する2回の回収は、場所・時期がほぼ同じで気象条件のみが異なると考えられるため、各2期間の捕獲数(対数値)の差を応答変数、各期間中の平均気温・降水量の差を説明変数とするモデル分析を行った。4種が気温に対して正の反応を示し、降水量に対しては3種が正の、3種が負の反応を示した。2種は気温に対して正の反応を示したが、ある温度を越えると負の反応となり、気温が上昇しすぎると活動性が低下すると考えられた。気温に対する反応は正に偏っていたのに対し、降水量への反応は種によってばらばらだったため、甲虫類の総個体数は気温に対して正の反応を示したが、降水量に対しては有意な反応を示さなかった。また北方系種と南方系種とで気温に対する反応に違いは見られなかった。


日本生態学会