| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-266 (Poster presentation)
物理的撹乱は、樹木の形態を変化させる。その結果、樹体には樹洞が形成され、枯死有機物パッチが樹上にもたらされることで、土壌動物は林床から樹上へと生息域を拡大していると考えられる。本研究では、ブナ林において、撹乱がブナ樹体を変形させた結果、1)樹洞が増加し枯死有機物パッチが増加しているかどうか、2)枯死有機物パッチを利用する土壌動物は林床の土壌動物とどれくらい異なるのか、を明らかにすることを目的とした。
伐採や雪害による樹木の形態変化が多く観察される福島県南会津郡只見町において調査を実施した。2015年10月末に、2か所のブナ林において、物理的な撹乱を受けて変形したブナ個体(変形木)と変形していない個体(通常木)の樹幹本数をカウントした。また、それらのブナ個体地上高2 m以下の幹・根部分において、樹洞の有無を確認した。樹洞内および林床から枯死有機物を採集し、ツルグレン装置によって、枯死有機物から土壌動物を抽出した。
ブナ通常木では、主幹はほぼ1本であったのに対して、変形木は萌芽再生によって、2本以上の幹が存在するものが多かった。また、変形木では幹や根の変形部分に樹洞が形成されており、通常木よりもその数は有意に多かった。樹洞から採集した枯死有機物には、多数の土壌動物が確認され、その個体数密度は林床と同程度であった。おもに採集された動物は、ササラダニ、トビムシ、トゲダニであり、目レベルでは樹洞と林床の群集構造は類似していた。これらの結果から、物理的撹乱による樹木の形態変化は、樹洞を形成し、枯死有機物パッチを増加させ、それらは土壌動物にとって好適なハビタットであることが確認された。